専門家を除いて、このホームページをご覧になったゲストの多くは、今まで栄養剤かストレス予防剤程度にしか考えていなかったカルシウムが、環境保全の世界でたくさんの利用価値を持っていることに驚かれたことと思います。しかし、一方では…
「何だかいいことばかり書いてあって面白くないなァ…」とか
「悪いところだってあるんじゃないの?…」といった
どこかスッキリしない不愉快な気分が残っているのではないでしょうか?
世の中に、いいことづくめはありません。したがって、カルシウムにも幾つかの問題点はあります!!
ホームページ開設1周年記念は、そのリクエスト(?)に応えることにいたしましょう…。いわゆる(愉快な)ア・ラ・サ・ガ・シです。と言っても本当のこと(仕方のないこと)ですから嘘も隠しもありません。悪いところを知って、善いところを活用する(そして、スッキリする?……)。ですから、今後のためにもジックリ読んで確認しておいて下さい。
このホームページに出てくるカルシウムは、ほとんどが「酸化カルシウム」(生石灰)です。「酸化カルシウム」は「炭酸カルシウム」(石灰石)を900℃から1000℃で焼成して製造しますが、「炭酸カルシウム」を1トン焼成すると、約600キログラムの「酸化カルシウム」になります。つまり(石を焼くだけで)重量的には約400キログラム(約40%)も減ってしまうのです。この減った分は、あの(温室効果ガスとして問題になっている)二酸化炭素です。
この二酸化炭素は、元々地球上にあったものを、大昔に(人類のために?)カルシウムが固定していたものです。ですからカルシウムを非難するわけにはいきません。しかし、掘り出して焼成する人類の方は大いに問題になります。
また、焼成のために使われる化石燃料(主に石油を使用します)は、「炭酸カルシウム」1トンあたり120リットル前後を消費します。そして、この化石燃料からは約300キログラムの二酸化炭素(化石燃料に含まれる炭素に空気中の酸素がくっつくので増えます!)が排出されます。したがって、廃棄物処理に利用する「酸化カルシウム」を1トン製造すると、二酸化炭素が約1.2トン(計算式略)排出されたことになります。つまり人類からみた「酸化カルシウム」という物質は、自重のほぼ1.2倍の二酸化炭素を排出することによって得られる“問題物質”…ということができます。
仮に、日本で1年間に焼却される可燃ゴミ約4000万トンに、ダイオキシンを発生させないために重量比で10%(約400万トン)の「酸化カルシウム」を加えて焼却した場合、それだけで年間480万トン近い二酸化炭素が増えてしまいます。
ちなみに、温室効果ガスの排出量は、一般に「炭素換算値」として算出します。これは、メタンやフロンなどと比較(合算)するために用いるもので、二酸化炭素の「炭素換算値」は、排出量の約27%(くっついている酸素を外した量)になります。ですから、二酸化炭素480万トンの「炭素換算値」は約130万トン。地球温暖化防止対策の基準になっている1990年(炭素換算値:約3億トン)の排出量に対して約0.4%増加することになるのです。
ダイオキシン入りの焼却灰をセメント原料として保管する場合は、「酸化カルシウム」の使用量は少なく年間110万トン程度、二酸化炭素の排出量は130万トン(炭素換算値:約35万トン)ですから、1990年比で約0.12%の増加(溶融の場合は燃料消費量だけで約0.7%の増加:当研究会試算値)になります。ちなみに、ゴミの焼却をやめてセメント原料として保管した場合は、炭素換算値で約190万トン(1990年比:約0.6%)増加しますが、現在ゴミの焼却からは約5%の二酸化炭素(炭素換算)が排出されていると見積もられていますから、こちらの場合はトータルで4%以上の二酸化炭素が削減できることになります。
なお、上記の増減幅の中には輸送や固化、保管などの段階で発生する(エネルギー消費に由来する)二酸化炭素の排出量や、(カルシウムを加えない)廃棄物の最終処分場から発生するメタンや二酸化炭素の排出量はカウントしていません。というのは、計算が煩雑になるのと、おそらく量的には相殺できる数値だろう…と判断したからです。特に、最終処分場から発生するメタンは、二酸化炭素の数十倍の温室効果があると言われている物質ですから、場合によっては「酸化カルシウム」の焼成による増加分まで吸収できる可能性があります。なお、溶融の場合は最終処分しませんが、燃料消費量以外に、施設の運転やリサイクルなどの段階で約50%(トータルで1%以上)は増加するものと思われます。
ところで「酸化カルシウム」は水と反応して「水酸化カルシウム」に変わります。そして、今度は二酸化炭素を吸収して元の「炭酸カルシウム」に戻って行きます。この辺がカルシウムの憎みきれない(?)要素になります。しかし(理論的には)排出した全ての二酸化炭素を吸収するものの、(現実的には)人類のモノサシを遥かに超えた長い長い時間がかかります。したがって、この効果はあまり期待できません。
ただし、カルシウムで固化した廃棄物をセメント原料として利用する場合は、(少なくとも石灰石に替わる部分については)二酸化炭素を排出しない原料となります。
次の問題点は、「酸化カルシウム」が水分と反応して発熱すること…にあります。実験室で(純粋な)「酸化カルシウム」と(純粋な)「水」だけを(完璧に)反応させると、300℃以上の熱が発生します。しかし、現実の世界ではそこまでいかず、100℃からせいぜい200℃といったところです。ただし、この程度の温度でも、近くに燃えやすいものがあれば発火しますから、火災の危険性は十分にあります。
このため「酸化カルシウム」は、つい最近まで消防法における危険物に指定されていました。現在は、安全な包装技術や保管技術などが確立されてきたために危険物からは除外されましたが、純度の高い「酸化カルシウム」だけは、ある一定量を長期的に保管する場合に限って、消防署に届け出る義務があります。ちなみに、このホームページで扱っているカルシウムは、「酸化カルシウム」の中に、ほかのカルシウム化合物を数種類混合したものを利用しますから、届け出の義務はありません。
だからと言って、火災の危険性がまったくない…というものではありません。また、取り扱いを誤ると、火傷をしたり、失明したりする危険性もありますから、注意が必要であることには変わりません。
次は(まだまだあります!)、「酸化カルシウム」が「水酸化カルシウム」に変化した場合のアルカリ性の問題です。「水酸化カルシウム」は(これも、理論的には)水に溶かせるだけ溶かすとPH12.6の強いアルカリ性を示します。しかし、廃棄物と混合した場合は、廃棄物に含まれる酸性の物質に中和されてPHは下がります。(処理直後は別として)PHが10以上になることは、ほとんどありません。またアルカリ性や酸性の物質というのは、水に溶けた状態のものを言いますから、乾燥状態の「水酸化カルシウム」はアルカリ性ではありません。ですから、問題が発生するのは、周辺に余計な水分があるときに限られます。
「水酸化カルシウム」(消石灰)は、酸性土壌の中和や軟弱土質の改良などに日常的に利用されている物質です。一般に、畑などの水分の少ない土に混合した場合、周辺の土壌に与えるアルカリ性の影響は、接触した外側の10センチメートルから20センチメートルの範囲です。また、軟弱土質などの比較的水分の多い土に混合した場合でも、影響が出るのは30センチメートルから50センチメートルの範囲です。日本の土壌はほとんどが酸性ですから、「水酸化カルシウム」のアルカリ性は容易に中和(これを土の緩衝力と呼んでいます)してしまうのです。ですから、この範囲の外側であればアルカリ性の影響は受けないことになります。ただし、皮膚などの人体に付着した場合は(程度にもよりますが)水で洗い流すだけでなく、酢を少量加えた「酸性水」で洗浄する方がベターです。
なお、重金属類を含む廃棄物や土壌に「水酸化カルシウム」を混合すると、アルカリ性によって多くの重金属類が(水酸化物を生成して)不溶化しますが、鉛や水銀などの一部の重金属類が溶出してくる場合があります。したがって、溶出量が環境基準をオーバーするときは「酸性水」で中和するか別な物質(主に硫化物)で固定する必要があります。ちなみに、アルカリ性による溶出が問題になるのは「水酸化カルシウム」だけを混合して、そこに接触した水のPHが10以上を保っているときに限られます。別に重金属安定剤(キレート剤といいます)を混ぜたり、混ぜない場合でもPHが10以下になれば溶出量は環境基準をクリアーします。参考までに、PHというのは10倍の水で薄めると1ポイント、100倍の水で薄めると2ポイント下がります。また、廃棄物の最終処分場の場合はPH8.6以上のアルカリ性の水は外部に流せないことになっています。
次(4番目)は、カルシウムは粉体か顆粒状で利用するので、空気中に飛散しやすい…という問題です。建設現場などで「酸化カルシウム」や「水酸化カルシウム」が利用される場合、多くはコンテナバックと呼ばれる1トン入りの袋から直接取り出したものを、重機等を使って露天混合しています。したがって、風の強い日などでは、周辺にこれらの白い粉が飛び散ることになります。最近、クモの巣状の粘着剤を混合した「飛散防止石灰」なるものが開発されていますが、これは周辺に民家などの多い場所で局地的に利用されるものです。
カルシウムを廃棄物処理に利用する場合は定置式になりますから、この問題はあまり大きくはなりません。カルシウムは専用のサイロに保管しておき、外側にカバーのついたスクリューコンベアーと呼ばれる圧送装置を使ってミキシング装置に定量供給します。このミキシング装置にはダストキャッチャーと呼ばれる粉塵除去装置が併設されていますから、混合段階でカルシウムが飛散することはありません。
廃棄物は(水分の多いものを除いて)ある程度水分を含ませてからカルシウムと混合します。したがって、ミキシング装置から排出された直後は、ドロドロした状態になっています。これをストックヤードで2〜3日養生(乾燥・固化)して、決められた保管施設まで搬出することになりますが、この段階から飛散問題が発生します。と言っても、廃棄物の表面に付着しているものが(はがれて)飛び散る程度ですから、量的には僅かなものです。ですから、表面に時々水分を供給するだけで飛散は防止できます。
なお、カルシウムを混合した廃棄物は、適度の水分がなければ固化しないので、乾燥させすぎないようにすることが大切です。もちろん、保管施設では雨水などを貯めておき、マメに散水することが重要な作業になります。ちなみに、散水量は表面がシットリするくらい多めに与えるのがコツです。
5番目はスケールの問題です。スケールとは簡単に説明すると水垢や湯垢のようなものです。カルシウムを多く含んだ水をヤカンや鍋の中で沸騰させると、内側に半透明の薄い膜がこびりつきます。温泉地などでは、よくお湯の出てくるところに白い沈殿物が溜っているのを見かけます。これらは主に「炭酸カルシウム」の結晶ですが、温泉の場合は泉質によって「硫酸カルシウム」であったり、ほかの「カルシウム化合物」であったりします。
このスケールが問題になるのは、水処理の世界です。処理水のカルシウム濃度が高いと、設置した水処理施設のあらゆる場所に付着します。このため配水管が目詰まりを起こしたり浄化装置の計器類が作動しなくなったりします。最悪の場合、(安価な)配水管は交換することができますが、浄化装置の方はデリケートで高価なものですから、頻繁に取り替える、というわけにもいきません。したがって、配水管から浄化装置に入る前に炭酸ガス(二酸化炭素)を吹き込んだり炭酸ソーダ(炭酸ナトリウム)を加えるなどして、処理水に含まれるカルシウムを沈殿除去しています。
ちなみに、廃棄物の最終処分場の場合は、カルシウムのほかに浄化装置を腐蝕させる塩素の除去も必要になるため、ほとんどが炭酸ソーダを利用しています。ですから、処分場の処理水には少量の「塩化ナトリウム」(食塩)が溶け込んでおり、舐めると少し塩っ辛い味がします。
水処理の専門家の間ではスケールの問題は(技術が確立されているために)それほど重要なものではありません。処理水に含まれるカルシウムの濃度が増えると作業が煩わしくなる…という程度の認識ですが、かと言って(敬遠はされても)歓迎されることではありません。特に最終処分場の場合は、地下に埋設された配水管を交換するとなると大変な作業になりますから、完全な嫌われ者となります。ただし、カルシウムによって浸出水に含まれる重金属類やダイオキシンの濃度が減り、スケールによって汚水漏れのリスクが軽減される(シートの破損を修復する!)ことは(密かに?)認めているようです。
最後は、天然の資源である石灰石を利用するために、自然環境(といっても、多くは「石の山」ですが)を破壊してしまうことです。現在、日本の石灰石は、セメント原料として1年間に約1億トン採掘されています。鉄鋼関係や建設、農業、公害防止関係では約2000万トンが採掘されていますから、合計で約1億2000万トンになります。したがって、ゴミの焼却をやめてセメント原料として保管すると石灰石の採掘量は約8%(計算式略)増加することになります。しかし、保管施設を緑化して、新たな自然環境を造り出すことは可能です。
このほか、(石灰メーカーに注文する以外は)手軽に入手しにくい…といった問題や(セメントに比べて)固化するのに時間がかかる…という問題などがありますが、カルシウムの問題点としては、ほぼこの6点に集約できると思います。
ところで、廃棄物処理の場合は「酸化カルシウム」のほかに、「珪酸系のカルシウム化合物」(高炉スラグ)や「硫酸系のカルシウム化合物」(石膏)なども利用します。しかし、これらのカルシウム化合物はほとんど無害な物質ですから、特に問題となるようなものではありません。ちなみに、この2つの物質は廃棄物(工業系の副産物)を利用したリサイクル製品を使います。また、「炭酸カルシウム」(石灰石の微粉末)も、石灰メーカーが石灰石を洗浄したときに排出する「石灰石水洗ケーキ」を利用することができます。
元々廃棄物処理に利用するカルシウムですから、バージン材である必要はありません。またカルシウムは煮ても焼いても無くなりません(逆に、鍛えられて元気になります!)から、何度でもリサイクルして利用することができるのです。……いけない!、また(不愉快な)自慢話し?になってしまいました。
当研究会としては、できることなら「酸化カルシウム」もリサイクル製品(エコ・カルシウム!)を利用したいと考えています。このホームページを熟読された方であれば、その方法は簡単に理解していただけると思いますので、ここでは、あえて解説はいたしません(ズルイかな?)…。実は、この方法は石灰を大量に使う「製糖工場」では、昔から常識的に利用されている技術ですが、この場合は、別に焼成炉が必要になってしまう…ということが欠点になるかも知れません。
なお、これらのカルシウムの問題点をどう捉えるか…。それは、ゲストのみなさんの、それぞれのご判断に委ねることにいたします。
コメントの投稿